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日本下水道新聞-最新の社説・解説

大地震への備えは

2007年08月29日

◆◇頻発する地震と被害◆◇
 「地震はいつどこで起きても不思議はない」といわれる日本列島。平成16年10月に発生した新潟県中越地震から2年半後の今年3月25日、震度6強の能登半島地震が発生。そのわずか4ヵ月後の7月16日、震度6強の地震が新潟県中越地方を急襲。いずれも死者を含む多数の負傷者を出し、家屋の倒壊やライフラインに甚大な被害をもたらした。
中越沖地震では、新潟県、長野県の広範な地域が罹災し、被害が集中した柏崎市を中心にポンプ場や処理場の施設等が破損したほか、管きょ施設が40㌔㍍、マンホールも約2400ヵ所が被災した(一次調査結果)。水処理機能の停止は免れ、外見上は被害は軽微と見えるが、必ずしもそうではなさそうだ。同市の処理場では、水道が全面断水に陥った翌日でさえ、流入水量が通常の約9割に達し、水道が通水した約1週間後には通常流入水量を上回ったという。管路に多数の亀裂が生じ浸入水が増加したためとも考えられる。心配されるのは、それに伴って土砂が管路内に浸入し管路周辺に空洞が生ずることである。放置すれば道路陥没の予備軍をつくることにもなり、きちんとした調査と対策が不可欠だ。施設への被害や社会的影響を最小化する努力を怠れば被害がさらに増幅することは必定である。 
  ◆◇なぜすすまぬ震災対策◆◇◇
 ただ、今回の被災に際して新潟市、名古屋市等の陣頭指揮の下、近隣の事業体や中部、関東ブロックの事業体、下水道関連の民間団体、企業等が多数支援に駆けつけ、円滑裡に早期復旧にこぎつけたことは高く評価できる。これまでの災害を教訓に支援体制や復旧ノウハウを蓄積し、応急復旧訓練等を積み重ねてきた賜であろう。また、国や関係機関等が発災直後から数次にわたり現地の被害現場に職員を派遣して各種調査を実施し、その結果を今後の防災、減災対策のさらなる充実に活かすべく検討中と聞く。先の中越地震でも、下水道地震対策技術検討委員会を設け、適切な復旧のための技術的手法や今後の地震対策のあり方をまとめている。これらを踏まえて実施されたであろう各種のハード・ソフト対策が今回どの程度の効力を発揮したのか、その検証も含めてさらにきめ細かな耐震化手法の確立が待たれる。
それにしても、これだけ大規模地震が各地で頻発しているにもかかわらず、対策があまりすすんでいないのはどういうわけか。現在、下水道施設は全国で管路総延長が約40万㌔㍍、処理場数が約2000ヵ所におよび膨大なストックを抱えている。だが、これらの施設の耐震化は、阪神淡路大震災の教訓を踏まえて新しい耐震設計基準が定められた平成9年以降はかなりすすんでいるものの、それ以前の既存施設については水処理施設・管路施設とも耐震診断でさえ約1割強しかなされていない。うち耐震化されたのは水処理施設で約3割、管路施設で約5割という。
  震度6以上の直下型地震は、この10年で7回。2年に1・4回の割合で起こっている。今後30年以内には東海地震や東南海・南海地震、首都直下地震等が50%以上の確立で発生するとも言われている。国民の安心・安全や生命・財産を守るべき国や地方行政・事業者が震災対策をおろそかにすれば、その責任は重大と言わねばならない。
  ◆◇積極的な取り組みを期待◆◇
 国交省は、平成18年度に時限措置として、大規模地震が想定される地域の重要拠点、重要道路等の排水機能や交通機能を確保するため、平成20年度までに計画期間5年以内の下水道地震対策緊急整備計画を策定する「下水道地震対策緊急整備事業」を創設。これにより、防災拠点と終末処理場を結ぶ管路や緊急輸送路下の管路、避難地のマンホールトイレシステム等の整備に対する補助対象を拡充した。現在、神戸市など7都市、山梨県と宮城県の流域下水道10地区で整備計画が認可され、事業が推進されているが、多くの自治体がこうした補助制度を活用し、施設の耐震性の向上に努めてほしい。
去る6月に社整審下水道小委員会がとりまとめた報告「新しい時代における下水道のあり方」でも防災・減災対策を総合的に推進すべきと提言し、震災対策の重点的な推進を求めている。これら対策をすすめるには、人材や技術やノウハウはもとより、投ずべき資金が必要だが、震災対策が遅れている最大の原因は、自治体の財政難にあると想像する。国は、さらなる財政制度の拡充や国と地方の負担のあり方などを明確にしつつ、地震に強い下水道の構築へ向けた積極的な施策を講ずるよう望みたい。同時に自治体は、地域住民の暮らしを守る事業主体としての責務を自覚し、適正な使用料のあり方などを含めて財政・経営の健全化に努め、計画的かつ効果的な震災対策の推進に取り組まれることを期待する。
下水道は地域住民の生命・生活・健康・安心・安全に直結した最重要のライフラインであることを忘れてはならない。(日本下水道新聞 1880号)


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