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議論から確かな行動へ

2008年01月01日

 昨年は激動の年であった。政局の混乱、社保庁の年金記録漏れ、食品偽装事件の続出、一方で都市と地方、大企業と中小企業の経済格差が鮮明化するなど、1年の世相を総括すれば、まさに「偽」の年であった。翻って下水道事業は、下水道政策研究委員会、社会資本整備審議会下水道小委員会、下水道事業促進議員連盟等から、下水道事業のあり方等を巡る提言が相次いで出され、議論の成果が結実した年でもあった。そうした流れを受けて迎えた平成20年、果たしてどのような年になるのか。政治・経済・社会は、なお流動・混迷が予想されるが、下水道事業にあっては、前年の各種提言や成果を実行に移すべく前進する年、行動する年にしてもらいたいと切に思う。
 わが国の下水道は、普及率が70%を超えた。生活環境の改善、公衆衛生の向上、浸水の解消等への貢献度は計りしれない。それ故か整備テンポを緩めてもよいのでは、といった声もあると聞く。何をか言わんや、である。確かに建設のピークを終えたとはいえ、未普及地域はまだ多く残っている。下水道の果たすべき役割や機能も多様化し、従来の排除・処理から処理水の再利用、汚泥の資源化、老朽施設の再構築、災害の防除、公共用水域の水質保全等々、課題が山積している。概成施設の管理運営や経営問題も、まさにこれからの大テーマだ。
 全国市町村の約7割に相当する人口5万人未満の中小市町村=1263都市の平均普及率は平成18年度末現在、41・2%に過ぎない。うち未供用の都市が53都市、未着手の都市が311都市。県レベルでも徳島県(11・9%)、和歌山県(16・0%)、高知県(29・3%)をはじめ15県が50%以下だ。
  下水道施設の老朽化も深刻だ。管路の老朽化による道路陥没は、全国各地で発生している。17年度は6600件、18年度も4400件にのぼっている。昨年8月、米国ミネソタ州ミネアポリスの橋が崩落事故を起こし、多数の死傷者を出した。老朽化が指摘されていたのに資金不足を理由に補修・補強をしなかったことが原因と言われている。
 最近、賞味期限の切れた食品偽装が次々と発覚し製造・販売会社が告発され、社会から指弾されているが、耐用年数を経過している下水道管路は全国で1万㌔㍍余に及ぶ。東京都では区部の管路総延長約1万5600㌔㍍の約13%、2000㌔㍍が法定耐用年数50年を超えており、老朽管に起因する道路陥没は年間1000件余に達している。また、区部には水再生センターが13ヵ所、ポンプ所が82ヵ所あるが、主要なポンプ設備等約4000台の約40%が法定耐用年数(15~20年)を超えており、早期の更新を迫られている。大阪市も法定耐用年数を超えた管きょが総延長4850㌔㍍の約2割、1100㌔㍍、それに2処理場と10抽水所が法定耐用年数50年を超え、機械・電気設備は全体の約6割が法定耐用年数20年を経過しているという。
 現在、両都市とも、それら施設の改築・更新に積極的に取り組んでいるが、昭和30~40年代に供用開始した下水道先進都市の下水道施設は、いずれも老朽化がすすみ、改築・更新時代を迎えている。老朽施設を財源不足や経済の足腰強化が先決として放置してはならない。ミネアポリスの橋崩落事故に見るまでもなく、大惨事が起きてからでは遅い。延命化や改築・更新を計画的に、しかも早期に実施すべきであろう。
また、国交省の発表では、下水道の成熟度を示す都市浸水対策達成率は、平成18年度末現在、53・2%、下水道水環境保全率は34・2%。高度処理人口普及率に至っては14・8%である。80%を超えているスウェーデン、オランダ、ドイツなどとは比ぶべくもない。こうした現状を認識し、下水道の質的充実をはかるには、何よりも財源・人材・技術力等を確保することが重要である。しかし、財政の逼迫、団塊世代の退職、人口の減少、使用料の伸び悩み等、取り巻く環境は厳しさを増している。これら構造的な問題を解決するには、技術・経営両面で徹底したコスト削減や人材の育成、経営の効率化等だけでなく、持続可能な21世紀型下水道を支える、管理・経営時代にふさわしい法財政制度や運営体制を整備することが必要と思う。
 加えて、今後より重要になってくるのは、地域住民との普段の対話と合意形成による協働体制の構築である。暮らし、環境、循環、活力に貢献する下水道といっても、国や事業体が描く下水道づくりと地域住民が希求する下水道とは、その描くイメージや具体的な実現手法、さらに使用料や管理・経営のあり方において必ずしも同じとは限らない。であればこそ、下水道事業が置かれている現状を丁寧に説明する必要がある。財政状況がどうなっているのか、老朽化がどの程度すすんでいるのか、合流式の雨天時下水はどこへ流れていくのか、浸水対策や地震対策はどうなっているのか、再利用や資源化はどのように行われているのか──など、下水道の役割や効果・問題点について情報発信し、実態を知ってもらうことが先決だ。その上で対話を重ね、施策や問題解決への合意を形成することが肝要である。とくに公共プロジェクトは、税金や使用料を負担しているユーザーの意向抜きには厳しい事業環境のなかで円滑・適正な執行は難しい時代となってきた。市民・住民参加型への転機でもある。
 国の平成20年度下水道予算政府案は、下水道界の熱心な要望運動にもかかわらず、前年度比5%減となった。下水道事業は、バラマキなどと言われる性格の事業ではない。安全・安心な生活と良好な水環境の創造は国民の願いだ。その役割と重要性を鑑みれば、もっと重点配分されてしかるべきであろう。にもかかわらず公共事業抑制の下に毎年度予算が削減され続けていることは遺憾と言わざるを得い。
 21世紀は水の世紀、環境の世紀と言われ、水問題で戦争が起こる、とは世界の通説。それほど水問題、環境問題は国際的な関心事ともなっている。7月に、先進国の首脳が集まり開催される洞爺湖サミットの主要テーマも地球温暖化問題、環境問題である。議長国・日本の対応とリーダーシップが問われる会議でもある。年内には、下水道の整備指標を盛り込んだ新しい社会資本整備重点化計画も策定されスタートする。地球温暖化防止や水環境の良化に資する省エネ・創エネ型、水・資源循環型下水道の創造をアピールする好機でもあろう。年頭に当たりサスティナブルな高質下水道の構築へ下水道界のさらなる活力と行動力を期待したい。


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