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水道の国際貢献を考える
2008年01月01日
水問題の深刻さ
最近、水に対する関心が高まっている。昨年12月、別府市で開催された第1回アジア・太平洋水サミットでは、われわれの日常とは異なる深刻な状況が語られた。ヒマラヤの氷河が消えかかっている。融けた水が谷間をせき止め、その氷河湖の崩壊で600万人が被災する恐れがある。ミクロネシア連邦、パラオ、キリバス、ナウルなど南方諸国では海面上昇で国土浸食や水没の危機に瀕している。中央アジアでは無秩序な灌漑でアラル海の面積が3分の1に縮小し、水量は10分の1になった。オーストラリアでは2年連続の干ばつで農業がダメージを受け、水の非常事態が続いている。また、世界人口の6割、約37億人が住むアジア地域では約16億人が衛生的な環境のもとにはなく、5人に1人の7億人が安全な飲料水を利用できない、との指摘があった。
2日間にわたる討議を通じて、地球温暖化、人口の増加、遅れているインフラなど、地域の厳しい水問題を知ることができた。最終日には「2015年までに安全で衛生的な水を利用できない人々の数を半減し、2025年までにゼロを目指す」という「別府からのメッセージ」を採択、わが国への期待が小さくないことを肌で感じることができた。
水道支援で国際協力を
わが国水道界を軸にした国際支援の歩みは一部事業体に始まり、徐々に拡大の方向を見せている。今年4月、日本水道協会、水道技術研究センター、日本水道工業団体連合会の3者で「水道国際貢献推進協議会」を立ち上げた。水道界が120年の歴史で築いてきた水道技術、管理手法などを国際移転するための、企画づくりの拠点を整備したものと言えるだろう。
続く昨年5月には、政府主導の「アジア・ゲートウェイ構想」がまとめられた。その中にアジア地域に対する水管理・供給政策の立案支援と、公共サービス業の「海外進出の促進」として、水道業を織り込むことができた。また、同6月改定の政府の「経済成長戦略大綱」でも、内需依存型の建設業、鉄道システムなど産業の国際展開や輸出振興への支援を行うとして、「水道業」がこの対象の中に位置づけられることになった。
さらに来年度予算案の中に厚労省では「水道産業国際展開推進事業費」を計上した。水道の国際貢献を柱の一つにした「水道ビジョン」実現のための施策だが、予算額の多寡はともかく、これまでの水道界個々の取組みがこの措置で収斂され、来年度以降、わが国の政策の一環として水道の国際展開が行われることになったものと評価できるだろう。自民党も昨年12月、「水の安全保障研究会」(中川昭一会長)を立ちあげ、アジアに対する水の支援の検討に動き出している。
打ち寄せる国際化
ところで、WTO(世界貿易機関)の場で1995年にTBT協定が発効した。TBTとは「貿易に関する技術的障害を取り除く協定」の略称だが、その趣旨は「加盟国が技術基準への適合性評価を行う場合、国際基準を用いること」というものだ。誤解を恐れず簡素化して言えば「国内規格は国際規格(ISOなど)に従うべきだ。国内規格がISOに準拠していれば、WTO加盟国はその製品が自国に参入することを妨げられない」という取り決めである。
各国でのTBTの扱いは一国の産業の存廃につながるため、それほど単純ではない。例えば水道メータ分野では国際法定計量機関(OIML)のもとで「型式承認の相互受け入れ」(MAA)を決めたが、わが国はその実施に「待った」をかけた。理由は外国産メータは6年の検定満了が多く「国産品の8年に比べ、性能に差がある」「国内のメータJIS化対応には時間がかかる」の2点だ。
メータのJIS化とはこれまで計量法(省令)で規定していた水道メータ規格を平成17年度に、ISO規格をベースに全面改定し、5年間隔で見直し可能なJISで規定したものだ。現在は経過措置期間中で、平成23年度には国内メータが全て、世界に通じるJISメータに切り替わることになるという。
技術力に定評のある日本だから海外メータには負けないとの見方がある。しかし業界はここ10年近く「コスト競争ばかり」。技術開発が停滞し、小型の羽根車式メータに関する限り「西欧メーカー品とはいい勝負」が実態のようだ。外国メータの国内への参入は当面ないが、それは時間の問題だろう。早急な国内の体制づくりが求められる。
実のある官民連携を
アジアに生産や営業拠点を整備してきている西欧の水道企業は、第三者委託に限らず、工事、水道資材でも無視できない存在になっている。だが、わが国の政府、水道界が模索している一連の海外戦略にはこうした海外企業と比べられるような主体が見えてこない。民、公(水道事業体)、三セク、O&M(維持管理専門会社)、商社のいずれなのか、その組み合わせか。主体づくりへの方法論も示されていない。主体づくりには水道事業体と民との提携が不可欠という指摘がある。水道民営化論の有力な根拠なのだが、民間売却を考えるような困窮水道が海外雄飛への主体になりうるには長い時間がかかるだろう。ベテラン技術者の退職、安値受注の蔓延、施設老朽化の進展などわが国水道界は内憂外患の様相が続いている。平成7~12年頃をピークに投資額も緩やかな放物線で下降を続けている。水道国際化が叫ばれて久しいが、海外と伍していくには、残された時間はそう多くはない。水道界の叡智の結集が今、一層期待されているといえる。
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