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解説 道州制と水道事業㊦ 再構築加速の可能性 議論重ね的確な対応を
2008年02月18日
■水道事業における役割分担
さて、道州制に関しこれら答申・提言・報告で述べられていることを水道事業に置き換えた時、その方向性はどうなるのだろう。
まずは何といっても、国・道州・基礎自治体の役割分担、事務・事業の配分、特に新たに登場する道州と国の役割分担が第一の検討課題となるが、地方制度調査会答申が提示したメルクマールに基づけば「国はナショナルミニマムにかかる基準など本来国が定めるべきものを定めることに重点化する」ことになるので、水道法における事務については、国は水質基準や技術基準など水道法によって水道事業が遵守すべき基準を定め、道州は水道事業に対する認可、指導監督などの事務を担う――という分担になることで、ほぼ異論を挟む余地はなさそうだ。経団連提言、自民党中間報告とも方向性は一致する。
これによって、行政手続きの重複といった問題が解消されるなど、国と地方を通じたさらなる効率的な行政システムの構築が可能となり、責任の所在もはっきりすることになる。
同様に、指針等についても「国は、本来国が策定する必要のある指針等の策定に重点化する」とのメルクマールに基づいて役割分担が明確化されれば、国は水道事業が目指すべき方向性を示す全国的・基幹的な指針の策定と、その実現に必要な制度的枠組みの構築に専念し、道州は、示された方向性の中で、制度的枠組みを活用して、個々の施策を企画立案から管理執行までこれまで以上に一貫して担う――という姿が期待されていることになる。
現在、日本の水道行政はISOやWTOが提起する国際的な課題やアジア等における国際貢献への取組みの強化といった国際的な視点に立った国内基準や指針づくりの取組みが求められている状況を見ると、こうした方面にも国は大きく軸足を移すことになるだろう。一方、行政区域内の水道事業、水道用水供給事業に対する認可、指導監督権限を一括して有することになる道州は、都道府県の圏域を越え、現在よりもさらに広域的な視点に立った水道事業の指導、監督が可能になる。
都道府県制から道州制に移行することにより、これまで都道府県が経営してきた水道事業、水道用水供給事業は道州営に移行することになるので、これに伴う運営基盤の強化も期待される。都道府県単位で行ってきた水道整備基本構想づくり(都道府県版水道ビジョンを含む)や広域的水道整備計画づくりも道州が中心となって行うことになる。現在の都道府県域を越えたより広範かつ効果的な広域化が、流域単位での管理、効率的な施設の再構築、水運用等の観点から、有力な選択肢として大きく浮上してくるだろう。
地方制度調査会答申の示した道州が担う事務のイメージによれば、河川や道路の管理は道州が担う主要社会資本整備事業として位置づけられており、これらと密接な関係を有する水道事業の認可や指導監督が道州で行われることになれば、他の主要社会資本整備との一貫性をもった対応・整備が可能となることも大きなメリットだ。
都道府県の水道行政の体制は過去に比べて弱小化の方向に置かれているが、経団連提言で指摘されているように、国から地方への権限移譲によって、地方の行政能力が向上し、地域における施策の質が高まることが期待される。地方は、単なる事務・事業だけでなく、独自の施策の企画・立案・展開にも責任を負うこととなり、行政能力の飛躍的な向上が求められるためだ。道州制の下での地方の水道行政の再構築が期待されていると言える。
なお、地方制度調査会答申によれば、緊急時に関しては国が直接関与する権限が残される。すでに都道府県が認可、指導監督を分担している水道事業に対して、緊急の必要がある場合は国も改善の指示、給水停止命令、立入検査、合理化の勧告、水道用水の緊急応援命令などを行うことになっているが、同様の権限が
これに該当すると考えられる。そうした権限が残されれば、全国の水道事業への国の支援や関与が確保されることになる。
その権限・役割に迅速に対応できるようにするためには、統計の整備等を通じ平常時からの全国実態把握の継続実施が必要となるだろう。国が全国の実態を的確に理解し、一定の直接関与を行うことによって、全国的視点に立った水道行政の維持が可能になると考えられる。
■「水」政策のしっかりとした位置づけを
地方制度調査会答申にある通り、道州の区域は、人口や経済規模などの社会経済的な諸条件に加え、気候や地勢等の地理的条件、政治行政区画の変遷等の歴史的条件、生活様式の共通性などの文化的条件なども勘案しながら、自立的で活力ある圏域を実現するとともに、効率的な行政システムを構築する目的で設定される。当然、ライフラインの代表格・水道を含む「水」政策は、道州制の下においても重要な地位を占めていくことが期待されており、その方向で水道界は今後、的確に対応していかなければならない。
これまで見てきた通り、
道州制への移行は、その波にうまく乗れば、停滞・閉塞感の言葉が用いられて久しい水道の再編・再構築加速の大きなきっかけとなる可能性を十二分に秘めている。少なくとも、水道がこの歴史的な議論と動きの中で、脇に置かれ、道州制移行後に国・道州・基礎自治体のそれぞれにおいて発言権が尻すぼみになっていくような事態は許されまい。
「道州制と水道」に関する水道界全体での議論、日本水道協会を中心とした今後の対応が期待される。
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