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官民あっての水道事業
2008年02月25日
懸念は談合のみにあらず
公共事業の談合問題が一応の落ち着きを見せる一方で、水道界の調達は安値攻勢、いわゆるダンピングにさらされている。ダンピングが続くと資本力のある企業が生き残り、そののち寡占化を招く心配がある。適正利潤が望めない調達ではツケを将来に残す手抜き工事や、サービス水準低下の心配もある。にもかかわらずダンピングを克服する手だては見られない。むしろ傍観、または助長する傾向が支配的のように見える。「値切れば安くなる」、そうした風潮がここ10年ほどで官公需世界に定着したようだ。
官・民は調達の契約上、対等な関係にある。民あっての官であり、お互いの存在を前提にして水道事業が成り立っている。だから基本的にはパートナーとも言える。その関係が談合問題を機に軋(きし)み続けているのは本当に残念だ。
単純に言えば指名競争入札と、一般競争入札の違いが今日の軋みの原因とも思われる。水道事業のような専門性、安全性、安定性、地域性が問われる世界で、全ての調達を一般競争入札に帰するわけにはいかないし、指名競争入札イコール談合という図式も少々短絡的だろう。
いい水、良質なサービスにはやはりコストがかかる。それを「安く、安く」と望めば、そのツケは将来の負担になる心配がある。ブーメラン効果に根ざすトラブルや事故が起きてからでは遅いと思うがどうだろうか?
安値受注の実例は
それで、話を具体例で見る。今から1年ほど前の漏水調査や管路図作成業務のうち、平成18年10月から19年1月までの4カ月間について、予定価格を公表していた全国85件ほどの落札率をみると平均47%であった。1%という犯罪的なケースもあった。そうした中でも最低価格制を採用していた3件の事例では落札率73%、77%、76%とまずまずの率を維持していた。このあたりに制度改善の一つの糸口があるようにも思われる。ざっと20社ほどが名を連ねる漏水防止業界だが、予定価格が無いに等しい乱暴な競争で、業界の寡占化が心配されている。
もう一例あげる。これも1年余り前の入札だが、ある水道事業体の連絡送水管工事で、調査設計、測量業務について16件の発注があった。大手、中堅入り混じって13~15社が札を競ったが、予定価格に対して平均落札率は51%であった。最も低い落札率は35%だった。設計コストがどの程度なのか、設計の難易度、手間によっても異なるが、お役所の予定価格の半額で、果たして企業として十分な再生産ができるのか、公正な仕事ができるのか、少々考えさせられる数値だった。
こうしたことは水道界のさまざまな方面で見ることができる。人口の減少、技術者減少に伴って成長が期待される水道施設の管理委託分野では「委託」すなわち「安い」という論理ミスに侵されてしまっている。良質な水道は良質な日々の維持管理作業に支えられるが、そのコストは決して安くはない。法的に第三者委託が整備されたものの、制度的フォローが不十分なことも一因という。そんな中で関係業界は今、大きな岐路に立たされている。杞憂の種は尽きない
不毛なコスト競争
水道界ではこの10年あまり、技術開発を置き去りにした不毛な価格競争を続け、コストカットに最大の努力を注いでいる。昭和40年代に水道業界に入り、若い力を振り絞って働いてきた退任間際のある会社役員は「水道をつくるため、水道界の足並みが揃っていた昔が懐かしい」と述懐する。昨今の話題は水道関連企業の撤退、廃業、買収騒ぎなどだ。近代水道120年の歩みの中で、われわれが経験する初めての現象でもある。
思えば平成元年にサッチャー政権の英国で水道民営化が断行され、それが津波のようにわが国に伝わった。平成8年に規制緩和の大号令が発せられ、国際競争力の強化、市場開放を国是に政策決定が次々にあった。以降、メータ、パイプ、設計、滅菌剤、プラントなど水道資機材の各分野で、公正取引委員会の指導、摘発が相次いだ。
国是に基づく大きな変化の水道版が、この10年ほどの水道界の変容ぶりなのだろうが、安値受注の傍観、黙認とも見えるような、落札者へのおざなりなチェックが常態化しているようでは、水道を自らの天職と考える良心的な企業や人々が失望し、すこしずつ「朱」に染まっていくように思えてならない。
次代へ叡智をしぼれ
日本水道協会は2~3月にかけて全国7地方支部で「水道事業における調達方式講習会」を開く。3年前の日水協札幌総会での緊急動議を受け、談合防止や価格だけを競う入札の反省から、総合評価の導入など今日的で実用的なさまざまな調達のあり方を報告書としてまとめ、その内容を全国各地で説明するという趣旨である。せっかくのチャンスだから、説明会を機に、自らの問題として未来への橋渡しになる調達について考えていただきたい。入札数量の減少などで大きな節目にある水道界だが、今こそ現状を真正面に見つめ、信頼性の持続を図れるよう、未来に向け各方面の叡智を結集していただきたい。
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