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耐震化を住民の声に
2008年04月24日
それぞれの持ち分で
地震に強い水道づくりを促進するため、厚生労働省は今年度から2年継続の全国キャンペーンに乗り出した。主催は厚生労働省水道課のほか、日本水道協会、全国簡易水道協議会、水道技術研究センターの4団体。ほかに日本水道工業団体連合会、水道関係紙誌の3団体・社が協賛に名を連ねる。キャンペーンを通じ、施設耐震化への啓発や耐震化事業の必要性を、広く住民に理解を求めていくことが狙いだ。この運動では、全国の水道関係者、事業者らが積極的な情報開示を行うとともに、自らの力量、持ち分の範囲で草の根の影響力を発揮することが求められている。例えばシンポジウムや相談会、研修会、作文・標語の募集、そのほかさまざまなアイデアに基づく多彩な広報、啓発活動への期待が込められている。
キャンペーンは「水道施設・管路耐震性改善運動」と名付けられている。官主導らしく少々重たいネーミングが気になるが、水道施設の耐震化を訴えることで安定給水に対する水道界の決意を示し、老朽施設の一層の更新、さらには冷え込んでいる水道界の投資マインドにも弾みがつくことを期待したい。
水道ビジョンの実現
水道が今なぜ耐震化なのか。直接的には平成16年6月に厚生労働省が発表した水道ビジョンで、災害対策として「基幹施設の耐震化率を100%にする」ことが明示されているからだ。水道ビジョンは今世紀中庸の水道をイメージして今後10年ほどで実施すべき施策を示している。つまり平成26年頃が目標だが、平成17年度末現在で浄水場耐震化率は約12%(能力ベース)、配水池は約20%(容量ベース)、導・送・配水本管の耐震化率は約11%と低いレベルであり、目標達成にはかなりの努力が必要とされているからだ。国会でも矢野隆司衆院議員(自民党)、糸川正晃衆院議員(国民新党)らが委員会質問でこの点を指摘。水道施設耐震化の緊急性と、国や関係当局に対して事業促進や助成制度の充実を訴えている。
キャンペーンではやはり住民への問いかけがポイントになるだろう。災害に強い水道づくりが「住民の声」として議会や事業体に届けば、事業体は動きやすくなる。厚労省の山村尊房水道課長は「行政指導ならば指示、指導で事足りるが、それでは状況はあまり変わらない。そこで住民の声が事業体や議会に届くよう幅広い運動を企画した」と趣旨を語る。
2000もの活断層
地震は必ず起きる。内閣府のHPによると、日本では四つのプレートがせめぎ合っている。フィリピン海プレートは年間3~5㌢、太平洋プレートは同じく8~10㌢も動き、大陸プレートに強圧をかけている。そのため国内には約2000もの活断層が確認されている。いずれも地震の巣だ。プレート型地震はM8クラスの巨大地震で広範囲な被害をもたらすし、活断層の地震は阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震のように局地的だが震度7の揺れで大きな被害をもたらしたことは記憶に新しい。
阪神・淡路大震災から13年を経た。この間、鳥取県西部、芸予、三陸南、宮城県北部、平成15年十勝沖、中越、福岡県西方沖、能登半島、中越沖など震度6、7クラスの地震が連続的に起きた。日本は地震の活動期に入ったとも言われている。そしてプレート型の東海地震等の巨大地震が今、注目されている。駿河トラフでは前回の安政南海地震(1854年)以降150年間大地震が起きていない。それを根拠に「いつ大震災が起きてもおかしくない」とされ、予知のための重点的な観測が行われている。
低廉には深い意味が
人間は生きていくため1日2L強の水が必要だ。体温調節や細胞を潤すことで筋肉や頭脳を働かせ、血流で老廃物を排除している。だから呼吸や発汗、排尿で失われた水分を補っていかないと、数日で動けなくなり、やがて死に至る。しかし、1日2Lならば2㌧タンク車で1000人分の水が運べる。震災での応急給水で実証済みだ。1日10台が10回運べば10万人を潤すことができる。ところが過去の震災経験によると、被災後1~2週間で風呂、洗濯、炊事、清掃、水洗トイレなど住民ニーズが急激に高まる。阪神・淡路大震災では水道の応急復旧に10週間、中越地震では2週間を要した。こうなると1人1日100L以上が必要だ。それはトラック輸送では無理。やはり水道管による大量輸送だ。だから、震災に強い水道づくりがまず必要で、これが基本だろうと思う。
清浄・豊富・低廉の水道3原則の意味は、実は水道が止まった時に理解できる。清浄、豊富は当然としても「低廉」には深い意味があるように思われる。見かけの水道料金は安いことが良いのは当然だが、それは将来にわたり、安定した水道事業の継続が担保されていることが大前提になってのことである。これを忘れた値下げの論調がまかり通っていることに危機感を覚える。
水道3原則を今日的にそう捉えれば、施設の耐震化は安定した水の供給に繋がるし、老朽施設の更新にもなるだろう。料金のわずかな値下げに腐心するよりも、いつでも蛇口から安全な水が得られることの方がどれほど住民サービスに繋がるか。その意味で今回の耐震化キャンペーン、その実施にはさまざまな意味とこれからの水道づくりへの大きな期待が込められているように思う。
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