連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第35回 トリハロ、米国基準値下回る 日本の水道は特に問題なし

昭和55年_06月26日 日本水道新聞_第2121号

2023年11月17日

米国環境保護庁 (APA)が昭和49年11月の報告書で、『有機性物質が比較的多い水を塩素処理すると発ガン性物質が形成される』と指摘、「人間の健康に影響を及ぼす可能性は否定できない」としてTHM濃度を低減化することとし、0.10 mg/ℓの規制に踏み切りました。わが国でも51年以来、調査研究に取り組み、制御目標値(0.10 mg/ℓ以下)が作られました。発端は、ニューオルリンズ市の浄水中に発ガン性物質を含む66種類の有機物質が発見されたことでした。
「トリハロメタン」について、公に厚生省の見解が出されたのは昭和55年6月20日の「日本の水道は特に問題なし」というものでした。

(中略)厚生省は二十日、有機塩素化合物の〝代表選手〟としてトリハロメタンを取上げ、「当面、飲料水の安全性について特に問題はないものと考える」との見解を明らかにした。近年における水質汚濁の進行と分析機器の進歩は安全性の点で未確認の物質を登場させているが、水道をめぐる水質問題においては過去のPCB、カシンベック病以来の大問題とみられ、その早期対策が望まれるところである。厚生省では五十一年度以降、各種団体等による調査研究を進めており、今秋には当面の暫定的な措置に係る指導方針を明らかにする予定で、内容が注目される。

トリハロメタン問題に対する厚生省見解
一、トリハロメタンは、各種有機廃水のほか天然水中にも比較的多く存在するフミン質等の有機物質と遊離塩素が反応して生成するとされており、米国等においては人の健康に影響を及ぼす可能性が否定できないとして、飲料水中のトリハロメタン濃度を低減化していく方針を出している。

二、厚生省においても、本問題を重視し、五十一~五十三年度まで、主として測定技術に関する研究(日本薬学会)を実施し、また昭和五十四年度からは、トリハロメタンの生成機構及び除去に関する研究(土木学会、五十四~五十六年度)及びトリハロメタンの生体影響に関する研究(国立衛生試験所、五十四~五十七年度)を実施しているところである。
三、厚生省としては、これらの研究の成果を見て、指導方針を定める予定であるが、(中略)
四、また、本年度から全国における水道水中のトリハロメタンの実態調査を開始することとしているが、現在までに得られた情報によると、わが国の水道水中のトリハロメタン濃度は比較的低く、米国の許容レベルである年間平均値0.10mg/ℓに照らしてみれば当面、飲料水の安全性について特に問題はないと考えている。(原文ママ)

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