連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第22回 41年の「広域化答申」 広域化の走り

昭和41年10月17日 日本水道新聞_第0774号

2023年4月28日

昭和41年8月30日、鈴木善幸厚生大臣の諮問機関である公害審議会水道部会が「水道広域化方策と水道の経営、特に経営方式に関する答申」を行い、広域化のビジョンを内外に示しました。
骨子は、①明治以降80年の歴史を有する市町村経営を中心とする水道事業を合理的経済的な大規模経営に移行させるべきだ②特に具体的要請に応えて、関東、中部、関西の3ブロック等は主要水系や有機的都市構想に見合った広域化策を進めるべきだ③経営範囲が都道府県をこえた場合の経営主体については公社、公団経営が適当である――というもので、いわば従来の市町村公営主義を打破することを前提としているものでした。

この答申について、昭和41年10月17日の社説「転換期に立つ日本の水道」では、次のように論じています。
八十年の輝かしい伝統を持つ日本の近代水道は、流動的な要因をはらみ、大きな試練を迎えようとしている。
第一は市町村公営の原則を打破しようとする水道広域化であり、第二は先行的なダムと水道広域化に対する国庫補助金の導入策であり、第三は高料金水道と先行事業への利子補給策の表面化であり、第四は地方公営企業法の改正に伴う新しい地方公営企業の実践化である。
この四つの要因は、必ずしも有機的に結びついているわけではないが、前者の二つと後者の二つは連けい的な意味合いを持ち、一方では施策的な指導性を掲げ、一方では国の財政的なテコ入れを図ろうとしている〝型〟を備えていることに気付く。
方法論としては適切な〝型〟であるがゆえに、これを受けて立つ水道事業体側はしっかり腰をすえ、水道事業の本質と使命と役割りを十分に検討し、後世に悔いを残さないよう対処しなければならないであろう。(中略)

水道水源開発補助金と水道広域化補助金を厚生省が四十二年度予算で要求したことは、ここ数十年途絶えていた水道事業への補助制度を復活、導入させる動きとして多大の注目を集めている。(中略)
こうした一連の新施策、新路線は、東京都水道の水不足、料金値上げ騒ぎを頂点とする全国的な水道事業の問題提起と政治的色合いの強化と深い関連を持つものであり、そうした土壌の中から発生した所産――水道事業に対する〝政策導入〟なのである。(原文ママ)

広域化推進策としては、7年後の「水道の未来像とそのアプローチ策」としてさらに突っ込んだ答申がなされました。

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