連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第23回 管理者の権限強化 地方公企業の改正

昭和41年03月07日 日本水道新聞_第0712号
昭和41年04月04日 日本水道新聞_第0720号

2023年5月19日

昭和41年4月4日号の日本水道新聞では、地方公営企業法の改正の背景について3党代表討論を掲載しました。出席者は、奥野誠亮(自民)、安井吉典(社会)、門司亮(民社)の各衆議院議員に柴田護自治省財政局長、小林重一日水協理事長の5人でした。
その中で柴田局長は冒頭、「赤字が増えてどうにもならなくなってきているので、これを健全な姿にしたい。今後の公営企業の経営体制をしっかりしたものにし、経営健全化路線を敷きたい。そして、その経営健全化路線を歩むことを前提としての財政再建であり、赤字を始末するというだけでなく、今後とも赤字が出ないような仕組みを作りたい。経営陣営については、雇われマダム式考え方の経営ではなく、水道なら水道で本当に水道経営に徹底していただくということから企業管理者にある程度、自由に人材を選べる道をこしらえる意味で、これを特別職扱いにする。また、経営を任せるので議会との関係で、ある程度の独自性を持たせ、その職員の身分関係は労働関係をそのままにし、一般会計の職員とは異なった給与体系をとるべきだということを前提にしている」と発言しました。

そして、昭和41年3月7日号に掲載された社説「新地方公営企業法案の諸点」においては、次のように論じました。
管理者の地位を強化し、料金の適正化をうたい、給与制度の改善を掲げ、負担区分の明確化を指示する新法案は、現行法の不備な点を強力に補強するものであるが、貫く思想は企業性の向上であり、企業的経営の導入である。(中略)
この〝管理者優位の原則〟は、例えば水道事業の場合、多くの事業体が建設段階から経営段階に入りつつあることと符合している事実からして、非常に重要な意味合いを包蔵しているのではなかろうか。企業としての経営活動が活発になることを暗示させるだけでなく、制度的にも権能的にも、そうした仕組み、システムが確立されていくことを示しているといえるからである。

それはまた、公共性よりも企業性の優先を裏付けるテコの役目を持つかも知れないし、建設・拡張時代の技術者中心の水道事業を、技術者と事務屋をとわず、管理者―経営中心の水道事業を推進することになる公算が強いからである。(中略)
したがって、新法がいかに立派であっても、理想的な制度法文化しても、それにふさわしい人を得ることができなかったならば、また、法の精神を最大限に生かす運用、努力がなされなかったならば、それは砂上の楼閣に等しいものになるであろう。
要は、その運用であり、それを運用する人間の問題であることを、地方公営企業関係者は深く考えるべきであるといいたい。

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