連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第28回 厚生省の標準単価廃止 狂乱物価対策として

昭和49年_06月10日 日本水道新聞_第1535号
昭和49年_06月13日 日本水道新聞_第1536号

2023年7月28日

戦後の水道主要資材単価は、厚生省が年度当初に公表する「標準価格」をほぼ遵守する形で推移してきました。しかし、昭和47~48年に各分野で物価が高騰したことから、標準価格制度を廃止したものの、事業量の減少でその実勢価格なるものが「コスト割れ?」現象を起こし始めました。

厚生省水道環境部は昭和49年5月29日付で、「国庫補助事業に係る申請に使用する主要資材単価」の標準単価方式を廃止し、補助事業者が「適正な単価決定」する〝実勢単価方式〟とする旨の通達を行いましたが、この転換を巡っては、さまざまな反響を呼びました。
「物価が不安定な現状から、標準単価を止めて、〝実勢単価〟にすることは的を射ている」(鉄管業界)と好感する業界がある一方、設計・コンサルタント業界や工事業界では、「設計や工事請負の場合、拠りどころがなくなって、混乱を来す」と懸念の色を濃くしました。また、ユーザーである水道事業体側も、妥当説と懸念説に分かれ、需要と供給のバランスを底辺に、〝実勢価格方式〟がどう落ち着くか注目されました。
厚生省が毎年度通達してきた主要資材の標準単価は、国庫補助事業の補助申請にチェックするために設定されてきた〝物差し〟の役目を果たしてきました。ところが物価狂乱により、各資材メーカーは年度途中で価格改定という値上げを行ってきたため、標準単価は〝標準〟の機能を失いつつありました。そのため厚生省は、価格決定は補助事業者に委ねるという〝実勢価格〟の採用に踏み切りましたが、これを主要資材業界は、「昨年起こったような混乱を避けるためにとられた妥当な措置」との見方を示しました。

経済がこのように混乱し、価格が流動的である現状においては、固定相場的な〝標準単価〟は実存し難いところから考えて、変動相場的な〝実勢単価〟とし、その決定は水道事業者に委ねるという方式は現実性を備えていると評しえよう。
厚生省通達は「国庫補助事業に係る申請に使用する主要資材単価」を対象に、 ①「主要資材単価」は、別に指示するまで、補助事業者が適正な単価を決定して使用すること②「職種別賃金日額」は四十九年度環境衛生施設整備等国庫補助事業に係る職種別労務単価表を基準とし、プラス・マイナス二〇%の範囲内で使用すること③「工事設計標準歩掛表」は四九年度環境衛生施設整備費等国庫補助事業に係る工事歩掛表によることを原則とすること④「建設機械に関する必要経費積算」は四九年度環境施設整備国庫補助事業に係る建設機械損料表によることを原則とすること―の四項目からなる。
(中略)自由主義経済の原則に従うことを意味するであろう。
比較的経済が安定し価格もまた安定して、一年間変わらない状態の時は「何年度の〝標準単価〟いくら」という方式は通用し、これを拠り所に資材の積算や売買契約を行うことが可能であった。
その適用が国庫補助事業に限るとしても、実際的には起債事業や自己資金事業にも準用され、その適用度合いはともあれ水道界共通の〝標準単価〟の役目を果たしてきた。
それがなぜ〝却下〟されたのか。
第一の理由は、昨年来の狂乱物価に伴う資材続騰のため、四九年度の〝標準単価〟を設定しても、それが一定期間適用されるかどうか極めて疑問であること。
第二は、各メーカーなどから提示された価格と原価構造がまちまち、あるいは一様的で、信ぴょう性のある適正な標準的価格を見い出し難いこと(原文ママ)

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