連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第31回 危機管理・テロ対策は万全に 千葉県の浄水場に毒物・廃油

昭和53年_07月3日 日本水道新聞_第1930号

2023年9月15日

国民生活に直結している水道だけに、その管理運営には細心の注意が要求されてきましたが、昭和53年の成田空港反対闘争での「浄水場への農薬投入事件」では、水道界に衝撃が走りました。

成田空港などに給水している千葉県水道局北総浄水場で二十八日、沈殿池に農薬及び廃油が投げ込まれているのが見つかり、千葉県警では水道毒物混入罪などの疑いで捜索を開始した。巡回中のパトロールからの報告を受けて水道局では直ちに取水、送水をストップしたが、同浄水場から供給を受けている船橋、習志野、鎌ケ谷の三市の一部と成田ニュータウン及び空港へは配水系統を切換えて対処したため、船橋市豊富地区の一部で断水被害が出たほかは大きな影響はなかった。農薬及び廃油が投げ込まれたのは四号B横流式沈澱池。水道局では直ちに廃油の除去を行う一方、沈澱した農薬の除去方策の検討に乗り出し、二十九日午後六時から開かれた水道局北総地区安定給水特別対策本部(本部長=岩井二郎水道事業管理者)で検討した結果、有機リン剤については活性炭及びPAC処理で大丈夫という見通しがつき、配水池及び管内の水を取替え二日夕方以降には運転を再開できそう。浄水場への毒物投入は水道の歴史始まって以来の出来事であり、犯人に強い非難の声があがっている。(原文ママ)

許されない行為 国川・厚生省水道環境部長
相手が誰れにせよ、けしからんとんでもないことだ。一般住民の飲料水を供給する浄水場に毒物を入れるなど、まことに常軌を逸したものであり、日本の水道の歴史にも、世界の水道でも聞いたことがない。およそ考えられない犯行である。幸い、水道法にも規定のある通り、水の健康に関するおそれのある時の緊急停止やそれに伴う適切な措置で大事には至っていないが、それにしても不特定多数の住民の飲む飲料水に毒物を入れるなんて……。浄水場は国によって立入り禁止だし、日本でも水道週間位いしか開放していないが、それにしても許されない行為である。(原文ママ)

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